ナッジの利用③行動特性の2

今日は前回に続き、人間の行動特性についてお話します。

1~4についてはこちら

人間の行動特性の続き

5.同調効果(みんなで渡れば怖くない。⇒渡らないと不安になる)・・・選択を迫られると、つい周りをみて一番多いものに賛同してしまいがちな特性のことです。また、始めは悪いことだと思っていても、周りの多くが平然とそれを行っているとなんとなく大丈夫なんだと思ってしまう習性があります。ほかにも、ひとりでは反論できなくても、仲間がいれば勢い良く反論をしてくる人なども、これですね。身近な環境に左右されるのは、生きるために必要だったからこそ身についた特性。歓迎できないふるまいであっても、このことを忘れずに、逆に良い方向へ利用できるよう冷静に対処したいと思います。

6.一貫性の原理(約束は守りたくなる。一度言ったことを撤回したくない)・・・これをうまく利用した方法が「コミットメント」してもらう、という方法です。人前で「こうします。」と言ったことは守りたい、守れないと恥ずかしいと思う行動特性を利用します。健康経営の必須項目に、経営者にまず「健康宣言」を内外に発表してもらうことを挙げているのは、この効果を狙っているのです。

7.認知不協和(自分を守りたい)・・・これは自己イメージと矛盾する気持ちや行為を同時に抱えたくない、という行動特性です。一昔前、学園ドラマや刑事もので「お前はそんな奴ではないだろう。俺は知っているぞ。」と心情に訴えて、相手の行動を抑制するシーンをみましたが、これはこの行動特性をよく利用したセリフかと思います。「買い占める人にならないで」などのような人格に訴えるキャッチコピーなどは、この特性を利用しています。

確かにね~と、前回の冒頭に書きましたが、私個人的には、「今のまま」はストレスだし、ある程度難しいことに挑戦するほうがやる気がでるし、みんなと同じならむしろ選ばない、など、かなりひねくれた一面も多いので、全面的に「わかる~!!その通り!!」と思うことばかりではないのですが、こういうマーケティング方法に沿って行われていることが、ある程度の成功を収めている、ということであれば、取り入れてみるのも、よいやり方だなと感じています。

とくに、企業という多様な意見のある場で、いきなり「健康経営」という新しい概念を持ち出す場合には、「納得」だけではなく「自然とそう動いてしまう」というナッジの利用はとても有効です。

例) 階段とエレベータホールに、階段を上ったときの消費カロリーとエレベータを使ったときの消費カロリーを明示しておく。(2.認知疲労 説明するより見てすぐわかるようにする。)

   朝の朝礼で必ずストレッチの時間を設ける。(3.現状維持バイアス デフォルトを変えて毎朝のルーティーンに組み入れると継続できる。)

   目標を書く、目標を達成したら社内報などで取り上げる。成果に対しインセンティブを設ける。(6.一貫性の原理、7.認知不協和 言ったことは実行、それを認知されると、そのままを維持したくなる。)

   仲間、サークル、グループをつくる。(5.同調効果 みんなでする=安心させると継続できる。 4.損失回避 仲間を失うことを不安に思うことで、くじけそうなときも継続できる。)

これらはありきたりに使われているものですが、やはり効果はあります。まだまだ、たくさんのナッジが使えそうですね。考えてみるのはとても楽しそうです。